前に、若い照明デザイナーのためにと称して、「舞台照明デザインの考え方」という文を書いた。その中で、照明デザイナーがやるべきことは「良い照明を作る」ことではなく、「既に決まっているはずの照明を探索し、発見し、実現する」ことだと述べた。それを読んで、素朴に次のような疑問を持つ人がいることがわかった。 素朴な疑問:照明が「既に決まっている」とすれば、舞台照明デザインは、誰がやっても同じ結果になるのではないか。 たしかに、既に決まっている照明を見つけて実現するのだから、誰がやっても同じ結果になるのではないか、と考えてしまいそうになるのは、なるほど理解できる。しかし、もちろん実際はそんなことはない。上記の素朴な疑問は、誤解から生じるものである。既に決まっていることをやるのであっても、行う人によって違う結果は生まれるのだ。いやむしろ、一見同じことを行なう中にこそ、「オリジナリティ」というものの源がある