十数年前に柳田邦男の『犠牲』を読み、私も神経症で苦しんだことがあるからある種の共感をもって、朝日新聞で『『犠牲』への手紙』を紹介したことがある。 当時、勢古浩爾さんもこれに触れていて、これを茶化した大月隆寛は情けない、と書いていた。どこで茶化したのかと思って勢古さんに訊いたのだが分からず、載っていそうな大月の本を数冊買ったが発見できなかったことがある。 しかし、その当時から、その妙に感傷的な筆致、そのうち宗教へ走りそうな雰囲気は感じていたのだが、やっぱりそういう人になってしまったらしい。まあ、あれだけの不幸に遭遇したら、人はそうなってしまうものかもしれない。 - 鶴見俊輔・加藤典洋・黒川創『日米交換船』には鶴見によるあとがきがあり、それが「二〇〇六年二月五日」の日付で、その後に二行、「都留重人氏は二〇〇六年二月六日に亡くなられた。この本をお見せすることができず残念である 鶴見俊輔」と追って