『孫子』の中で、最も多くの人に知られている言葉は、次の一節だろう――、 ・彼を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず(「謀攻篇」) 戦いにおける情報の重要性を指摘した、不滅の名言にほかならない。さらに『孫子』には、次のような指摘もある。 ・気候やタイミングと、戦いの地形を知るならば、常に勝利はものにできる (天を知り、地を知れば、すなわち勝、窮まらず「地形篇」) こちらは物事を起こすタイミングとインフラを知れ、という教えであり、古代から現代に至るまで、情報こそ、戦いの死命を制する鍵になってきたのだ。 こうした観点は現代の情報化社会を生きる我々にとって、ある意味で当たり前のものかもしれない。 しかし、古今東西の名勝負師や、ずば抜けたビジネスマンたちの足跡をたずねてみると、「彼を知り、己を知る」「天を知り、地を知る」という行為を、人並みはずれて実践している姿が浮かび上がってくるのだ。