富山第一の右SB城山典が投げたロングスロー。ゴール前へと飛んだボールに敵味方共に反応し損ない、こぼれたところで待っていたのは交代出場のMF村井和樹。左足でミートしたボールがゴールネットを揺らし、これが92回目の高校サッカー選手権におけるウイニングゴールとなった。 この瞬間、筆者の脳裏に浮かんでいたのは、実を言うとクエスチョンマークである。今大会、ずっと富山第一を取材していたにもかかわらず、城山がロングスローを投げていた覚えはまるでなかった。「まさかこの瞬間まで温存していた秘密兵器? この展開になるまで隠し続けられるものなのか?」。セットプレーに独自のこだわりを持つ富山第一とはいえ、驚きでしかなかった。 だが実のところ、クエスチョンマークが浮かんでいたのはピッチ上の選手たちも同じ。試合が終わった後、城山に対してチームメイトが投げかけた言葉は「お前、ロングスローなんて持っていたの?」というもの