水木しげるの『総員玉砕せよ!』という長編戦記漫画を読んだ。水木氏の従軍体験がベースになった戦記物であり、自身が体験した事実だけが淡々と描写されていて、引き込まれるように読んでしまった。以下、感想です。 あらすじ 昭和二十年三月三日、南太平洋・ニューブリテン島のバイエンを死守する、日本軍将兵に残された道は何か。アメリカ軍の上陸を迎えて、五百人の運命は玉砕しかないのか。聖ジョージ岬の悲劇を、自らの戦争体験に重ねて活写する。戦争の無意味さ、悲惨さを迫真のタッチで、生々しく訴える感動の長編コミック。(文庫版裏表紙より) 感動の長編コミックとあるが、90%は事実という叙事的なストーリーで、読了後は虚無感だけが残ることを最初に断っておきたい。僕は先日沖縄へ行った時に「玉砕は嬉しかったんじゃないか」と見当違いの感想を持ったが、大部分の徴集兵にしてみればこの感想は大きな間違いだったと理解するに十分だった。