開催中の正倉院展で、琵琶など華やかな宝物に混じって猛毒の薬が陳列されている。小枝状のものが5、6本あった。冶葛(やかつ)という。 マチン科ゲルセミウム属の蔓(つる)性植物で、葉の3枚も口に入れれば即死という物騒な代物。1250年以上の時を経ても効力は失われていないらしい。 曲がった小枝と見えたのは根っこのようで、色といい形といい不気味だった。ゲルセミウス・エレガンスという優雅な名前があり、黄色い花が咲くらしい。 咲く花のにおうがごとくとうたわれた奈良時代だが、政争に明け暮れた時代でもあった。聖武天皇の皇子安積親王の急死は藤原仲麻呂による毒殺といわれ、井上内親王母子も幽閉されて毒殺された。 政敵の藤原氏によって追いつめられた長屋王も毒を仰いで自害した。さらに伝説の中将姫は、継母に憎まれて毒殺されかかったという。 そんな歴史を重ね合わせると、薬として宝物のリストに載る毒物も、漢方以外の用途に使