(2010年10月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 「民主主義と自由を求める(中国)国民の願いと要求は圧倒的で抗し難い」――。これはいかにも戦闘的な発言だ。国家政権転覆扇動罪で11年の懲役刑を課された中国人民主活動家で、漸進的な政治改革を訴え続けた長年の実績が評価され、10月8日にノーベル平和賞を授与された劉暁波氏の言葉であっても何ら不思議ではない。 だが実は、発言の主は劉氏ではない。これは先週、ノーベル平和賞の発表前に米CNNのインタビューを受けた温家宝首相の発言だ。 中国の経済的成功があまりに劇的で持続的だったために、この国はどのように統治されるべきかという、約20年前の天安門事件で頂点に達した大きな政治問題は、いつしか廃れて重要性を失ったようにも感じられる。 しかし、温首相の発言は、中国の政治改革に関する議論はノルウェー・オスロだけで繰り広げられているわけではないことを示して
17年間、私は朝日新聞の社員記者だった。そのうちの4年間は、新聞の社会部や支局で「警察・検察・裁判所」の事案を扱うのが仕事だった。10年間は週刊誌「アエラ」の記者だった。こちらは記者クラブに入っていないので、同じ社内という「直近」で、新聞と取材源を観察する立ち位置になった。その後、米国への自費留学を経て2003年に朝日新聞を退社した。今はフリーランスの記者として活動している。 こういう経歴は日本の「報道業界」の中では希少だと思う。その経験から見ると、つい先日まで報道記者が誰もその「正義」「無謬」を前提にして疑わなかった検察庁特捜部からぼろぼろ逮捕者が出ていることは、「ソ連の崩壊のようなカタストロフ的な権威崩壊」をしみじみ感じる。 もう「検察の威信」「巨悪を眠らせない」とか言い張っても誰も相手にしないだろう。これからの日本の刑事捜査や犯罪報道は今回の「フロッピーディスク証拠偽造事件前」と「事
今年の国際通貨基金(IMF)年次総会は通貨を巡る議論に終始した。もっと正確に言うなら、議論を独占したのはドルと人民元という2つの通貨である。前者は弱すぎると見なされていたためであり、後者は柔軟性がなさ過ぎると見なされていたためだ。 しかし、この論争の背後には非常に大きな難問が控えている。世界経済の調整はどのように進めるのが最善なのか、という難問だ。 IMFのオリビエ・ブランチャード経済顧問は、先日発表された「世界経済見通し」の序文で次のように語っている。 「ピッツバーグの主要20カ国・地域(G20)サミットで設定された目標を引き合いに出すなら、『力強く、均衡が取れた持続的な世界経済の回復』を遂げることは、そもそも決して容易なことではなかった。それを実現するためには、経済の面で2つの基本的かつ難しいバランスの再調整が求められる」 遅々として進まないバランスの再調整 第1のバランスの再調整は、
米国人の6割は、メディアの報道に疑問を持っているという世論調査が出た。メディアに対する不信感は、1970年に調査が開始されて以来最悪となった。 これは、9月末に米ギャロップが発表した毎年恒例のメディアに関する世論調査の結果だ。「新聞、テレビ、ラジオなどのマスメディアは、ニュースを十分に、正確に、公正に報道していると思うか?」という質問に対し、57%が「そう思わない」と回答した。 これが「新聞のニュース」に限定すると、信頼していない人は75%。「テレビのニュース」に限定すると、78%が信頼していないと答えるという惨憺たる結果となった。 テレビニュースの「やらせ」は当たり前? 1年ほど前、保守系の草の根運動「ティーパーティー」が盛り上がり始めた頃、この運動を熱烈に支持した保守系テレビ局「フォックス」のニュース番組が、ティーパーティー集会に集まった人数を実際より数倍多く報道した。このニュースを伝
尖閣諸島周辺の領海侵犯事件を巡(めぐ)る菅民主党政権の対中外交は、外交史に長く残る汚点である。 どんな国柄の国家を相手にしているのかを、首相は目を開けてしかと見つめなければならない。中国は「偏狭なナショナリズム」と強烈な国家意識の塊の中国共産党の国である。菅直人、仙谷由人両氏のような国家観なき人々の率いる日本とは、あらゆる意味で対極にある。 中国は1971年12月に尖閣諸島の領有権を主張し始めて以来、約40年、執念を燃やしてここまでやってきた。92年制定の領海法で東シナ海も尖閣諸島も中国領だと宣言し、今年3月施行の海島保護法で中国近海の6千以上の無人島への管理を強化した。尖閣諸島も同法の対象だ。今回の領海侵犯事件を彼らが徹頭徹尾、国家主権の問題と捉(とら)えて攻めたのは当然だ。 だが、菅氏にも仙谷氏にも、中国の意図を読みとる見識は見られない。だからこそ、全(すべ)てを那覇地方検察庁の判断に
白川方明日銀総裁は9月26~27日に神戸・大阪に出張し、2つの講演を行った。26日は、神戸大学で開催された日本金融学会の2010年度秋季大会で、「中央銀行の果たす役割」と題して講演。27日は、大阪で開催された地元経済4団体共催の懇談会に出席して挨拶(講演)「最近の金融経済情勢と金融政策運営」を行った。 これら講演の直前である9月25日に、毎日新聞は1面で、「日銀来月追加緩和へ円高警戒、米より前に」と報じた。日銀は米国に先駆けて「10月に追加の金融緩和策を実施する方向で調整に入った」「具体策としては、超低利資金を供給する『新型オペ』の再拡充や長期国債買い取り増額が見込まれるほか、資金供給量の拡大に着目して、2001~2006年に実施した量的緩和策を再導入することも検討課題になる可能性もある」という。 一方、日経新聞は白川総裁が9月26日の講演を終えた段階で、翌27日、「『量的緩和』要請強める
大畠章宏経済産業相は12日の閣議後の記者会見で、中国から日本への輸出が滞っているレアアース(希土類)について「荷の動きは確認されておらず、実態的には正常な状態にはまったくいたっていない」と述べ、改善が見られないとの認識を示した。 経産省は、中国で建国を祝う国慶節の連休が明けた8〜11日を中心に輸出状況を調べたという。大畠経産相は「今週1週間の状況を見て、実質的な荷の動きに改善がなければ、来週あたりから直接、中国政府に改善を求める何らかの行動を起こしたい」とも述べた。副大臣や政務官を派遣し、中国政府と交渉することも検討しているという。 ただ、レアアース以外の対日輸出は「4割くらいの企業で改善の動きがみられる」としている。
沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁が撮影したビデオ映像の公開を日本政府が先延ばし続けるなか、中国国営通信社や共産党系のインターネットサイトで、海保の巡視船側が中国漁船に衝突したとする図などが掲載されている実態が10日、明らかになった。日中首脳会談が4日に行われたにもかかわらず、中国当局も放任を続けており、中国政府の一方的な主張が“既成事実化”する恐れも強まっている。(原川貴郎) 中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙「環球時報」は、衝突事件の“実態”について、日本の巡視船の方から中国漁船に衝突したとする説明図を掲載してきた。中国政府の「日本の巡視船は中国の領海で中国漁船を囲み、追いかけ、行く手を遮り、衝突して損傷させた」(姜瑜・中国外務省報道官)との主張に沿ったものだ。 「(中国漁船が)巡視船に体当たりした悪質な事案で逮捕は当然」(前原誠司外相)とする日本側の説明とはまっ
“団塊退職バブル”は来なかった 「団塊退職バブルがくる!」。こんな気楽なフレーズがささかれていたのは、つい数年前のことだ。2007年から2009年にかけて団塊世代の定年退職がピークを迎え、膨大な人口がシニア市場に参入する。そしてシニア市場が、一気に花開く。これが“団塊退職バブル”の仮説だった。 団塊以前の高齢者はお金と時間の余裕を持ちながら、今一つ消費意欲に欠けていた。それに引き換え団塊世代は前の世代より消費意欲が旺盛であり、過去にさまざまな消費ブームを巻き起こしてきた実績がある。この点を考慮すれば、退職した団塊世代がシニア市場を牽引するという予測には、一定の説得力があったと言える。ちなみに電通は、「団塊退職による消費押し上げ効果は8兆円」と予測していた。お金も時間も元気もある団塊世代への期待は、非常に大きなものがあったのだ。 しかしながら、団塊世代のリタイアによりシニア市場が花開くとの予
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く