☆上野動物園に来ています☆ ----------------------------- 冬一郎はへそを曲げたまま、ぐいぐいベビーカーを押していった。 日本猿たちが走り回る猿山を右手に軽く眺めて、坂を降りたり登ったりしていくと、くまたちの丘と呼ばれるゾーンであった。 とても立派な展示施設で、上から覗き込むような形で観察できるようになっている。冬一郎はロンをベビーカーから抱き上げると、眼下にクマの姿を探した。大きな黒っぽい毛の塊。ヒグマである。距離があるとはいえ、遮るガラスもなくクマを目の当たりにするのはなかなかスリルがあり、冬一郎は思わずロンを抱く腕の力を強めた。 「ロンちゃん、見えるかい。あれがクマさんだよ。ちょっとこわいね。大丈夫だよ、パパがついているからね」 ロンはしかし、何も恐れてなどいなかった。「くまちゃ!」と嬉しそうに指さし、よく見ようとバタバタ身をよじった。冬一郎はいよいよ怖く