『影のない女』 作:水輪ラテール 漱流 金沢 / Norio.NAKAYAMA 雰囲気のあるバーのカウンター。 カウンター内にバーテンが1人。カウンター席には女が1人。 女は、少しわけありといった面持ちである。 (以下、バーテンを『バー』と記す。) 女「………。(溜息をつく)」 バー「どうか、されましたか?」 女「ううん。……ちょっと、ね。 バー「 私でよければ、話相手になりますよ?」 女「………そうね、聞いてもらおうかしら。」 バー「ええ、よろこんで。」 女「(遠くをぼんやり眺め、回想にふけりながら)………昔の男の話。」 バー「はい。」 女「……昔々。ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさん が川で洗濯をしていると、川上から、大きなモモが、」 バー「あの、」 女「もう少し聞いて、ここが大事な所なの。」
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