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ブックマーク / healthy-boy.hatenablog.com (5)

  • トウチャンは父になる - リオ・デ・ジャネイロの祭り

    まだ夜の早いうちから娘を寝かしつけるために一緒に布団に入り、尿意でという訳でもないけれど目が覚めて覚めた以上はトイレに行こうかと起き出して、起き出したついでにリビングへと入り、薄いカーテンを開けると人差し指の第二関節までで隠れるくらいの大きさの駅の灯りがみえて、台所の電気だけつけてキーボードを打ち出した。 十月三日、その日にちを特別に記憶していた訳ではなく、いま携帯のメールをみたらその日に届いていた「今日離婚届けを提出してきました」という母親からのメールを受信したとき、特に何も思うことはなかった。わざわざ弟とふたりでそろそろ正式に離婚したほうがいいと説得しに行った後の出来事なので、当たり前といえば当たり前だった。そんな説得をしに行った理由というのもひどい話で、兄弟ふたりとも近い将来父親の面倒をみるつもりがなく、それは金銭的な面だけでなく、一切関わりたくないという考えからであって、どうしてそ

    トウチャンは父になる - リオ・デ・ジャネイロの祭り
  • チ、チ、ババチ - リオ・デ・ジャネイロの祭り

    目も鼻も口も眉毛もどこも、どの角度からも自分には似ていないと思っていた娘が成長するにつれて、もしかしたら昔の自分の顔に似ているのではないかと思えはじめてきていた――正月に実家を訪れたときに、その思いが正しいのかどうか確かめようと古いアルバムをタンスの奥から出してきて、持ち帰った。布張りの表紙と背表紙とに挟まれたアルバムは重く、車の助手席に乗せると揺れてもカーブを曲がっても動かなかった。ミカンをべながら、果汁で汚さないよう気をつけて表紙をめくると、小さな足形があった。いまの娘の足よりもはるかに小さな足。順番にめくっていくと、娘にそっくりな写真もあれば、あまり似ていない写真もあり、似ている、似ていないとと娘と笑って話しながら眺めた。2歳を過ぎて弟が生まれ、さらにめくって一枚の写真をみたとき、おそろしくなった。チ、チ、ババチ、チ、チ、ババチ…… 明るい日差しを受けた芝生に寝転んだ父親の上に弟

    チ、チ、ババチ - リオ・デ・ジャネイロの祭り
    joruri
    joruri 2013/01/05
    素晴らしい…
  • ノンストレス・ライフへの招待状 - リオ・デ・ジャネイロの祭り

    月曜日から金曜日まで毎朝シャツに袖を通しネクタイをしめて、ズボンをはいてベルトをしめて、ズボンと同じ色のジャケットを着てお弁当を持って自転車に乗って駅に向かうと同じ時間帯に駅に向かうスーツ姿の男たちがそれぞれ同じように自転車にまたがって赤信号の前に勢ぞろいする。名前も年齢もわからないけれど顔だけはなんとなく覚えていて、彼らとの距離によっていつもより家を出た時間が早いか遅いか判断できることもある。同じスーツ姿の男性でも、それぞれ違う顔をしていて、区別ができる、でももっと幼い頃はスーツ姿の男性をみれば、(働いている大人がいるな)と思うだけだったはずで、ましてやそれぞれのスーツ姿の男性が考えることなんて、それぞれの職業に関することだけだと考えていた節もあったような気がする。学校の先生は勉強を教えることだけを考え、警察官は泥棒を捕まえることだけを考え、消防士は火を消すことだけを、銀行員はお金のこと

    ノンストレス・ライフへの招待状 - リオ・デ・ジャネイロの祭り
    joruri
    joruri 2011/11/16
  • 蚊の進化 - リオ・デ・ジャネイロの祭り

    瞼を閉じているのか、開いているのかわからなくなる程の暗闇の中で、あたりでは物音ひとつせず、生きているのか死んでいるのかもわからないと思いかけたそのとき、聞きなれた耳障りな音が届き、それまでの経験上、(刺されたら痒くなる、だから刺される前に叩き殺さなければ)と考えると同時に、その場所がみなれた寝室であることも思い出される。よりよい睡眠を得るため、外からの灯りが入ってこないよう遮光性の高いカーテンを取り付けたばかりだったと思い返しながら、目はさえてきて部屋の灯りをつけ、耳元から飛び去ったものがどこへ行ったかと探し始める。 キジも鳴かずば打たれまい、というのとは少し異なるが、蚊は痒みさえ残さなければ、吸われる側から危害を加えられる事態は大幅に避けられるだろう。さらに言えば、痒みを残さないだけでなく、血を吸われた側に何かしらのメリットを与えられるようになれば、優遇された状態で、より効率よく血を吸う

    蚊の進化 - リオ・デ・ジャネイロの祭り
    joruri
    joruri 2011/07/06
    素晴らしい。こういうのを文学というんだろう。
  • ユッケショック後の、焼き肉店店主へのインタビュー - リオ・デ・ジャネイロの祭り

    3月11日以降、震災の影響を受けた企業に対する融資枠が県知事の指示により唐突に創設され――新聞の朝刊の地域欄に突然その概要が発表されてはじめてその制度のことを知った――間接的な影響でも融資が可能とのことだったので、その焼き肉店へも(世間の自粛ムードの影響による売り上げの減少)という理由で融資を利用してはどうかと提案をし、「借りておこうかな、どうしようかな、検討します」と迷っていたところへ、ユッケの中毒事件が起き、その影響もあったようで、あらたに借入をするよりも、現状の返済額を減らしてほしいと店主から融資条件変更の申し出を受けるに至った。 一度融資の条件変更をしてしまうと、建前上どうかは別として、返済能力に問題ありとみなされ、今後新規の融資による資金調達が難しくなってしまうという現実があるため、もう少し現状のままの金額で返済を続けてみましょうということで話は終わった。 売り上げを伸ばすため

    ユッケショック後の、焼き肉店店主へのインタビュー - リオ・デ・ジャネイロの祭り
    joruri
    joruri 2011/05/25
    面白い。
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