初めて初芝を見たのは川崎球場だったか。南海戦。山内孝の外側のボールを打たされて詰まったライトフライが、そのまま風に煽られてスタンドイン。数えるしかいない客が、ゆっくりとダイヤモンドを回る初芝に爆笑を浴びせている光景が忘れられない。 後日、西武戦を観にいったとき、ロッテが終盤追い上げ一点ビハインドの九回裏。四球二つとヒットでノーアウト満塁のチャンス。またしても客は数えるほどしかいない。しかし、期待を胸に見守る先は、途中出場のセカンド堀。 堀は初球を打ち上げてショートへの見事なポップフライ。しかし、続くバッターは初芝である。敢然とバッターボックスに向かう初芝を見守りながらも、ヒットならサヨナラの場面なのに「大丈夫か、初芝」という空気だけが球場に流れた。 またも初球。内角の変化球らしきボールをバッチリ引っ掛けて、芸術的なショートゴロ併殺打。九回裏、ノーアウト満塁という絶好のチャンスを二球で