「eiga.com」(芝山幹郎) 映画の鋳型はマカロニ・ウェスタンである。冒頭のシーンを見れば、だれしもセルジオ・レオーネのタッチを連想するだろう。ナチスに家族を殺された娘の復讐譚が話の軸になっていくところも、レオーネ・ファンにはお馴染みの流れではないか。 だが、映画はとんでもない方向に舵を切る。逸脱に逸脱を重ね、悪夢と笑いを何枚も重ね焼きして「見たことのない戦争映画」へにじり寄っていく。となると、謳い文句が「痛快戦争アクション」だったことなど、遠い昔の笑い話のように思えてくる。「特攻大作戦」や「地獄のバスターズ」が原型にあるかのような装いがタランティーノの陽動作戦だったことも、すぐさまはっきりする。なにしろここでは、「映画中映画」を除いて、最前線の戦闘シーンなどまったく出てこないのだ。 「映画のこと」(佐藤哲也) 全体は五部構成で、シチュエーションとしては 『特攻大作戦』 に似ていなくも