― 加藤はいねの『女の塊』第1回 ― 大人になったのに、思いっきり振られたことがあって。 なんていうか、三十路過ぎの肩で渾身のストレートを投げた私も私なのですが、相手も相手で、全盛期の清原を思わすくらいのフルスイングでね、場外に消えるくらいのホームランでカキーンつって振られたことがあって。寝ずに考えた「僕は死にません!」に匹敵するくらいの名ゼリフが軽くスタンドに運ばれたわけで、もう道端アンジェリカも驚くくらいの道端だったんですけど、砂があったら拾いたいぐらいの惨敗を喫したわけです。 失恋したら、まあ、どこに行くっていったら、大抵飲みに行くよね。あと、まあ、海とかに行くかもね。ドラマとかなら。 で、私はどこに行ったかっていうと、お墓に行きました。振られた夜に。 家から15分くらい自転車を飛ばした裏手に、お墓があって、そこの塀の裏に簡単に入れるような錆ついた門があって、そこからよじ登って、お墓