ドイツを焼いた戦略爆撃 1940―1945 [著]イェルク・フリードリヒ[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)[掲載]2011年5月1日著者:イェルク・フリードリヒ 出版社:みすず書房 価格:¥ 6,930 ■憎悪の連鎖、皆殺し戦争の実態 本書を読み抜くには、相応の想像力と洞察力が必要である。表層では、第2次大戦下(とくに戦争末期)にアメリカ、イギリスによるドイツ各都市への無差別爆撃がいかに苛酷(かこく)であったかが多面的に語られている。ナチス犯罪追及の作品が多い著者は、日本の読者に向けても、「ドイツの、ロシアの、日本の、英米の軍隊は皆、主として民間人を、しかも大量に死亡させた」と問い、しかし「使用された武器」によってそれが許されたり、許されなかったりすることの矛盾を訴えている。 本文中では、火災戦争、爆撃戦争といった語がかなりの頻度で使われる。皆殺し戦争の真実はどこにあるか、それを「