井上ひさし氏の戯曲『雪やこんこん』(朝日新聞社 1987)を読んでいたら――読んでいたらといっても、もう20年も前の作品ですが、いろいろおもしろいことばがありました。その1つに「腑に落ちる」というのがあります。和子 なるとも、ならないでか。ま、さっきのおっかさんのお考えが腑{ふ}に落ちたこともあり、また、これから年の瀬にかけてはなにかと物入りだから、(p.124) 和子 (頷いて)そう見当をつけたら、昨夜{ゆうべ}からのことが何も彼も腑に落ちました。(p.178)私はこの作品を発表当時に読み、また、当時のこまつ座の舞台も見ましたが(余談、その時はこの作品の良さが分からなかった。今は分かります。もう一度舞台が見たい)、この「腑に落ちる」には注意を引かれませんでした。 今は注意を引かれます。というのも、「『腑に落ちる』は誤りだ、『腑に落ちない』としか言わない」という声をしばしば聞くようになった
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