なぜ金融危機は人々を結束させないのか ロバート・D・パットナム『孤独なボウリング』(柏書房)を読んだ。 本書を読みながら、私は考えた――災厄はしばしば人々を結束させる。天災しかり、戦争しかり。しかし金融危機だけは違う。互いに手を携えて難局に立ち向かうどころか、逆に「万人の万人に対する闘争」の度合いを増し、野蛮状態へと近づいてゆく。なぜなのか? 本書は、20世紀アメリカにおける人々の結びつき(=社会関係資本、ソーシャル・キャピタル)とその経時変化を論じている。本書の主張をおおまかにまとまると、 1. 社会関係資本には、「結束型」のものと「橋渡し型」のものがある。「結束型」は、家族、階級、民族などの排他的な枠を持ち、結びつきが強い。結束型の枠を超えて人々を弱く結びつけるもの、たとえば草野球チーム、ロータリークラブ、ボーイスカウトなどが「橋渡し型」である 2. 社会関係資本は、人々が互いを強く信