幻想の海 お盆休みが明けて、出港して数分後 船頭がブリッジに来るようにと、大河さんが僕に告げた。 「なんだろう?」と思いブリッジに向かった。 ブリッジに入ると、兄である冷凍長と船頭がいた。 兄の左手には、まだ包帯が巻かれてあった。 前の航海の時の怪我が原因だ。 精密検査の結果、障害は出ないであろうが、リハビリは必要らしい。 左手が思うように動かないようだ。 船頭が「慶次、お前この航海冷凍長しろ。飯炊きを兄貴と交代だ」と言われた。 へっ!?僕、まだ乗船半年ですけど…。 マグロ船は、乗船3年で一人前と言われ、3年目に冷凍長になるケースが多い。 早い人でも2年からが普通だろう。 「俺、できないよ!」と言いそうになったが、言うのを辞めた。 船頭と冷凍長が話し合った結果、僕なら出来ると判断したのだ。 断る理由も、ビビる必要もない! 「わかった」と答えた。 兄は、飯炊きを経験しているので、それについて