戦場における部隊の戦闘力を評価する際には、兵士や装備などを単位とした数量で比較しがちです。しかし、多くの研究者が定量的指標で見落とされがちな部隊の編成、兵士の士気、あるいは作戦の基本となるドクトリンの内容なども戦闘力に及ぼす影響が大きいと報告しており、それぞれの分野で因果メカニズムの分析が進められてきました。 指揮も注目されることが多いトピックです。近年では情報革命の成果を取り入れ、戦闘部隊の戦闘力を飛躍的に向上させることが期待されているのですが、具体的にどのような指揮関係を設定すれば、部隊の作戦行動にとって最適と言えるのか、議論は定まっていません。 ライアン・グラウアーの著作『軍事力を指揮する(Commanding Military Power)』(2016)はこの議論に貢献した業績です。彼は戦争ではなく、個々の戦闘における指揮のあり方が部隊の戦闘力に及ぼす影響を分析しようとしています。