学者は「能力主義」についてどのようなことを語ってきたのか、研究室の書架にある新書縛りで確認してみよう。[前編] 日本教育小史―近・現代 (岩波新書) 作者: 山住正己出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1987/01/20メディア: 新書 クリック: 6回この商品を含むブログ (16件) を見る この教育白書発表の翌六三年、高度経済成長下の教育政策の基調となった、経済審議会の答申「経済発展における人的能力開発の課題と対策」が出された。 そこでは、経済発展は国民生活向上のためにすすめられるのであり、それを担う人的能力の開発が政策の目的であるとされる。そして、「労働力としての人的能力といっても、その基調には生活向上への希求と人間尊重の精神が貫かれていなければならないし、また、われわれの考え方にはそれが貫かれているのである」という。 この言葉の限りでは異論のある人はいないだろう。たしかに以後、