【睡眠覚醒リズムの基礎的知識と時差症候群】 (財)航空医学研究センター 精神科非常勤医師 伊藤 洋 (東京慈恵会医科大学 精神医学講座) はじめに 睡眠は動物界に広く認められる普遍的な現象であり、人間にとっても人生の約1/3を占める重要な生体現象であると言えます。この睡眠に関する科学的な研究が始まったのは比較的最近のことですが、1953年にアメリカのAserinskyとKleitmanによってREM睡眠が発見されたことを契機に飛躍的な進展を見せています。そして現在では、毎日繰り返される睡眠と覚醒とを一つのリズム現象として捉える時間生物学は最も盛んに研究が行われている科学領域の一つと言えます。 一方、睡眠障害は24時間社会、国際化社会、ストレス社会などと形容される現代社会において、その出現頻度が増加しており、最近の疫学調査では我が国や欧米諸国などの先進諸国では成人人口の20~30%が何らかの