文庫総選挙の中で Twitter上には「読書垢」と呼ばれる人びとが居て、集落のような集合体を形成している。 全てが熱狂的な読書人というわけではないが、それぞれのスタイルで本を読み、楽しみ、語り合うという界隈である。当然、選書傾向もバラバラである。 そんな人々の間で、あるムーヴメントが発生した。「#この○○文庫がすごい総選挙」というタグを通して、それぞれに「推し」の文庫本レーベルの「推し」の作品を見せ合うという、一種のお祭り騒ぎである。 見渡せば、錚々たる面子が出揃っている。岩波、中公、河出にちくま。中にはあまり知られていないと思われる、マイナーな文庫本レーベルのものもある。 その数多の「文庫総選挙」タグの中に、強い存在感を以て数字を伸ばした、一つのレーベルがあった。 講談社文芸文庫――。 文庫本の世界は広い。講談社という一つの出版社だけ取ってみても、ラノベから学術まで、多くの文庫本レーベル