文/大西連(NPO法人「もやい」理事長) 「このままだと年を越せないかもしれません……」 岸田さん(仮名)はそうつぶやくと、大きなため息をついてうつむいた。僕は彼にかける言葉を探しながら、なんともなしに通りを行き交う人々を眺めていた。駅に向かう人々の表情は師走のせわしさに追い立てられながらも、どこか明るく、喜びに満ちているようにも見える。 2014年12月30日。池袋。岸田さんは待ち合わせ時間ピッタリに駅前のコーヒーショップにあらわれた。数日前、Facebook経由で彼から「相談したい」との連絡が入り、この日、急遽会うことにしたのだ。 待ち合わせにあらわれた彼は、ダウンのコートにジーンズ。それにちょっとオシャレなショートブーツ。大きなボストンバッグを持ってはいるが、とても生活困窮している人には見えない。むしろ、隣のテーブルで談笑している男子大学生のほうがよっぽどみすぼらしく見えるくらいだ。
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