「石油ストーブの火はバケツの水で消える」 1968年1月30日毎日新聞朝刊3面(東京本社版)に生活雑誌「暮(くら)しの手帖(てちょう)93号」の大きな文字の広告が載った。そのころ年間1000件を超える石油ストーブによる火災が起きており、初期消火をどうするかは人々にとって切実な問題だった。 当時は毛布をかぶせる方法が常識とされ、東京消防庁も勧めていた。暮しの手帖はそれに異を唱えたのだった。 50年代から名物企画「商品テスト」を隔月発行する雑誌の主力記事に据え、各メーカーの電気掃除機を10万メートル動かしたり、トースターで食パンを4万3088枚焼いたりといった徹底した検証で、薦められる製品、薦められない製品を実名で書いていた。 手帖は60年に各社の石油ストーブの性能比較をして以来、消火方法を調べていた。66年には古い住宅を実際に燃やすテストをして「消すのは水が一番。水が油の温度を下げて、燃えな