上村雅之(敬称略、以下同)が率いる任天堂 製造本部 開発第二部が開発を進めたファミリーコンピュータ(ファミコン)は1983年7月に完成した。十字ボタンを備えるコントローラなど、ファミコンの仕様はその後のゲーム機に多大な影響を及ぼした。十字ボタンは、同社の携帯型ゲーム機のゲーム&ウォッチから受け継いだ。発売当初は伸び悩んだが、1984年に入ってから火がつき、国内だけで現在までに累計1000万台以上を出荷した。ファミコンはまさに家庭用ゲーム機の代名詞になった。 開発ツールは社内で準備 機能を検証するための試作機はLSIの仕様が確定した時点で、リコーの技術者が回路図を描き、開発第二部のスタッフと共同で製作した。 組み立てた試作機を使って、1970年代後半に発売した専用LSI搭載型ゲーム機の機能を再現してみた。プログラミングを担当した沢野貴夫(現、情報開発部情報第一課課長代理)は「これはいける」と