『芥川賞・直木賞150回全記録』(文春ムック)より無断で切取らせていただきました。 講演会のトリは、五木寛之さんだった。スペイン戦争のお噺で、歴史に埋れた市民の運動などをご紹介された。学園紛争真只中だったから、学生聴衆への注意喚起、ありていに申せば、ほんのわずかの共感・激励を含みつゝも、冷静な判断をと懸念を表明されたのであったろう。無知な私は、その真意を把握しかねた。 『さらばモスクワ愚連隊』『蒼ざめた馬を見よ』『青年は荒野をめざす』次々ベストセラーで、飛ぶ鳥落す勢いの人気作家だった。朝鮮半島からの引揚げ体験、大学は苦学の果てに露文科除籍。業界紙編集者・作詞家・放送作家から叩き上げて直木賞を受賞。その経歴までが学生を痺れさせていた。 薄暗いジャズ喫茶の隅っこで、「安穏な定住者の眼じゃなくてさぁ、旅人の眼で視なけりゃ、人生は見えないと思うんだよな」などと気炎を吐いている若者は、まず間違いなく
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