紫禁城内南西の一角を占める武英殿の背後に、「浴徳堂」と呼ばれる浴堂があるが、その起源に関してはいまだ論争中である。武英殿全体については興味深い歴史があるのだが、その古い浴堂について知る人はほとんどいない。これまで信じられてきたように、乾隆帝が寵愛した香妃のために建てたものだろうか、それともそれ以前の元朝皇帝たちの浴堂として建てられたのだろうか? 浴堂の形は非常にユニークで、内部は白釉をかけた滑らかな磚で覆った包といった趣である。徐々に狭まる丸天井の曲線に合わせて、磚の四隅は焼成前にカットされている。丸いガラスの明り採りが丸天井の上から突き出ていて、空の光を採りいれている。水は壁面の穴から注がれていた。 浴堂への入り方もまた奇妙で、秘密の通路を通って忍びこむかのようだ。通路は浴室の扉に行きつく前に、2~3回急角度で曲がる。恐らくそうすることによって浴室の湿度と熱を保ったのだろう。あるいはプラ