アブライカ、おそらく油烏賊とでも表記するのだろうが、この言葉を知っている人はそう多くないだろう。一言で述べると、タイを一本釣りで釣るための餌で、あまりに簡単に釣れてしまうために、禁止されているものである。 このアブライカと昭和天皇にまつわるちょっとしたエピソードをご紹介する。この話は、母方の祖母に聞いたものであり、何分昔のことでどこまで本当かはわからない。ただし、祖母は山口県下関市で、山陰側の吉母という小さな漁村(現下関市吉母町))から魚を仕入れ、同じ下関の唐戸市場に卸す、ということを10代の頃から60年も続けてきた人間で、もう仕事を辞めて10年以上になるが、彼女はある意味で下関の水産業界の生き字引的な存在である。 ある時、昭和天皇が下関に行幸されることになった。記録を調べると、東京オリンピックの行われた昭和39年(1964年)に確かに行幸の記録があるので、おそらくこの時のことだと思われる