逮捕は手続きの一つ ――「逃亡のおそれ」「罪証隠滅のおそれ」以外に、現行犯逮捕できない理由はあるか。 「パッと検討するかぎり、例えば、(1)『違法な身柄拘束中の自白は証拠能力を否定される』というルールが思い浮かぶ。例えば、違法な逮捕によって得られた自白は、その内容がどうあろうと、裁判所に無視されてしまうというルールだ。これを本件に当てはめれば、無理矢理現行犯逮捕しても、その逮捕が違法と認定されてしまえば、その後の被疑者調書が紙くずになるリスクがある……ということを意味する。すなわち、有罪判決をもらうどころか、起訴すら危ぶまれることになりかねない。今般の事件においてそれは許されない。 あるいは、(2)『身柄拘束は適法でも、病気中の状態の被疑者がした自白は、任意にされたものでない疑いのある自白として、証拠能力を否定され得る』というルールも思い浮かぶ。これは例えば、今度は現行犯逮捕が『適法』であ