人は泣きながら誕生し、涙に送られて人生を終える。これまで生理的現象や個人の内面に生起した感情の発露とみなされてきた涙。本書は、その社会性・文化性を感情社会学の理論研究と質的データの実証研究を通して明らかにする。相互行為場面、フィクションデータ、史資料を分析する多彩な視点が、構成主義的研究方法の可能性を拓く。 はしがき[北澤毅] 第Ⅰ部 感情経験への社会学的接近 第1章 感情はどこにあるのか――社会化・制度化への着目[北澤毅] 1. 感情概念再考 2. 感情の記述可能性について:実践することと記述すること 3. サックスの感情論:相互行為系列上の適切な場と意外性への着目 4. クルターの感情論 5. 情緒経験の社会的機能:感情調達装置としての儀礼への着目 第2章 感情社会学の変遷と課題――社会・文化性の問い方をめぐって[小野奈生子] 1. 感情経験の一般的なとらえ方 2. 感情社会学の基礎理