本書は英語の正書法の史的な面と現在の状況を精緻に論じた研究書である。大部分は英語の音声的および音韻的体系と書記体系の発達を解き明かすことに費やされているが、この論述を通して著者は、綴字がどの程度まで音変化を反映しているか、綴字が音変化にうまく歩調を合わせられなかった理由は何であったのかといった疑問を明らかにしてくれる。少なくとも18世紀までは英語の書記体系の不安定さの理由の一つは音韻論が常に「一音一字」の体系として規定されえない点にあったことを具体的な例を豊富にあげて指摘するなど、文字体系に係わる諸問題に詳しい検討を加え、綴字改革についても一つの章をあてているのが特徴である。