進化し円熟するインバル・マーラー演奏の総決算 佐伯茂樹(音楽評論) 2012年、インバル&都響による新・マーラー・ツィクルスが始まる! インバルは、2008年のプリンシパル・コンダクター就任を機に、マーラーの交響曲を積極的に取り上げており、どの曲もきわめて完成度の高い名演として語り継がれている。実演やCDによって、今や世界のマーラー演奏をリードするコンビとして不動の評価を受けていることはご存知の通り。 しかし、これらの名演は偶然生まれたわけではない。都響は、若杉弘(88〜91年)、インバル(94〜96年)、ベルティーニ(2000〜04年)と、マーラー・ツィクルスを既に行ってきた。インバルも、80年代にフランクフルト放送交響楽団(現hr交響楽団)と全集録音をリリースし、新しいマーラー演奏のスタイルを方向づけた。 フランクフルト放送響と都響の録音を聴き比べれば分かるように、インバルのマーラーは