心中しようと思った。彼女と一緒に崖から飛び降りるつもりだった。 それは最後なのだからと思って有給休暇を貰った日のことだった。 心中するのは夜中と決めていたから、朝起きてやることなんて何もない。 おれはふと野球の試合を観たくなった。これと言って観たい理由なんて なかったのだけれど、強いて言えば小中高と野球部に入って色々 練習を積んで来ていたからかもしれなかった。 それでおれたちは、どうせ死ぬまでの暇潰しと決め込んで近所の球場に 出掛けることにした。野球をやっていたと言ってもおれの役割は大体 ベンチウォーマーだった。たまに代打や代走で使われるくらい。 レギュラーになることはどうしても出来なかった。 春が近づいて来る外野席は結構温かいのでおれたちは上着を脱いだ。 彼女の胸元に光っているペンダントが眩しかった。おれが買った安物だった。 彼女は野球のことなんて何も分からないので退屈そうだった。まあ、