自分に向ける刃が他人に向かう 佐藤優と斎藤環の対談本である『なぜ人に会うのはつらいのか』にこんなやりとりがあった。 斎藤 ……で、そんな彼らも、実は優生思想を自ら振りまいている部分があるんですよ。自分が疎外されたと感じた時に、彼らが必ずと言っていいほど口にするのが、「俺なんか生きていてもしようがない」というひと言なのです。なぜなら、金も稼げない、生産性もない、何の役にも立っていないのだから……。しかし、そうやって並べていくロジックの全てが、「役に立たない人間は生きているな」という優生思想に、見事に収斂されてしまう。 佐藤 往々にして、そうやって自分に向ける刃は、他人にも向くことになります。 おれは、これについて思い当たるところがあった。 おれは常々、自虐を振りまいている。振りまいている自虐の「自」からはみ出ないように気をつけてはいる。 しかし、気をつけたところで受け取り手が「これは自分のこ
