● その日、新人デザイナーだった私は仕事の遅れを取り戻すべく、いつもより2時間程早く出勤していた。今から15年くらい前のことである。 他にまだ誰も出社していない朝8時30分頃、机に向かって作業をしていると、掃除のおばちゃんが部屋にやってきた。 いつものように、お掃除を一通り終えると 「あら齋藤くん、朝早くからごくろうさん。これあげるわね。」 と、こんにゃくゼリーを3個くれた。 「あ、おばちゃんありがとう。」 そっけなく返事をしながら作業を続ける。 私は真剣に仕事をしていると、無意識に息をとめてしまうことが多い。この時もそうだった。自分の発した「はあー。」という大きなため息というか深呼吸の音で我に返って制作中の仕事を見直す。 ●● ふと机の隅に目をやると、こんにゃくゼリーがあった。そうだ、さっきおばちゃんにもらったんだっけ。これ、旨いんだよねー。 私はいつもそれを食べるときと同じようにラベル