かつて、名著「数学入門(上下)」(岩波新書)の前書きで故遠山啓は『20世紀後半の世界に活動する日本人に必要な数学として、私は一応「微分方程式まで」という線を引いてみた。たしかに微分方程式までの知識が日本人の常識になったら、それはすばらしいことであろうと思う』と書いた。こんな理想を語れた時代があった。残念ながら21世紀に入ったいま、日本人の数学の常識はこの理想には程遠いと言わねばならない。様々な事情で高校数学を中断せざるを得なかった少年、少女たちも多い。彼らにそれでも数学を学ぶことをあきらめずに続けてもらうための、必要最小限の数学の数学知識とは何だろうか。数学教育の専門家や教育の実務にあたる人と一緒に考え、討議の結果、2次式の理解を一つの目標としてみたいという結論に達した。 2次方程式の解の公式は一時中学校数学から削除されてしまったが、ここには、記号運用と内容の理解という数学理解のも
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