両親にも学校の先生にも、あまつさえロールプレイングゲームの「主人公の名前を入力してください」というお願いにまで反発していた17歳の夏休み。尾崎豊になりたかった。でもデフォルトの名前のまんまでゲームを始めるようになると、尾崎にも勇者になれなくなっていた。つまらなくなって、ごりっと何かが欠けて落ちる音が聞こえて、地面が震えて、空はどんよりと曇り、動物たちは盗んだバイクで走り出して森からいなくなった。僕はひとりで立ちすくんでいた。欠けた部分、脇腹がやたらとむず痒かったのでぽりぽりと掻きむしってたら、どんどんと欠けていった。しばらくすると痒くなくなって、何も感じなくなった。おちんちんを触っているとき以外は何も感じなくなった。でもそれでよかった。就職して社員証というものを貰ったので、勇者の証はもう必要ではなかった。わざわざ仲間を集めて旅に出なくても、誰かが毎月決まった日に、僕の口座にお金を振り込んで