はきはきと語り掛けるようだった。1984年(昭59)8月8日、第66回夏の甲子園大会開会式。選手宣誓は、福井商主将の坪井久晃が行った。 「宣誓。我々、選手一同は第66回全国高等学校野球選手権大会に臨み、若人の夢を炎と燃やし、力強く、たくましく、甲子園から大いなる未来へ向かって、正々堂々、戦い抜くことを誓います」 時間にすれば、約26秒。この宣誓が、1929年(昭4)から続いてきた甲子園の選手宣誓の歴史を大きく変えることになる。 文章だけでは伝わりにくいが、2つの点で画期的だった。まずは文言。それまでは、多少の違いはあれ「スポーツマン精神にのっとり、正々堂々、戦うことを誓います」といった紋切り型が続いていた。次に口調。中継局のアナウンサーは「いつもの張り裂けるような宣誓とは違って、自然な声で落ち着いた分かりやすい宣誓でした」と好意的にコメントした。それまでは、シンプルな一文を絶叫するのが、甲