〈阿〉 きょうはせっかく横田老師にお目にかかったので、私が一番好きな禅語についてもお話ししたいと思います。それはたった2文字、「恰好」という言葉なんです。 横田老師もご存じのとおり『趙州録』に出てくる言葉で、趙州老師が弟子から「大困難が訪れた時に老師はどうなさいますか?」と問われた時、「恰好!」(よしきた!)と答えたそうですね。 どんなことが起きても「よしきた! 自分にピッタリの困難がやってきたぞ」と受け止めて生きる。この言葉を私は大切にしています。 〈横田〉 恰好、よしきたと。まさに人生の極意ですね。 〈阿〉 その言葉から思い出すのは、はじめ塾という私塾を創始された和田重正さんの本に出てくる鳶職の方のお話です。 鳶職でも間違って木から落ちてしまうことがたまにあるそうなんですが、そんな時は自分から降りてしまうんだと。怖いと思って目を背けると怪我をするけれども、自分から降りて地面から目を離さ