一九四五年、大東亜戦争と日本では呼ばれていた戦争に日本が負けた時、ブラジルに二十万人ほどいた日本人移民の間で、日本が勝ったというデマが広まった。のちに「勝ち組」「負け組」の争いと呼ばれるようになるもので、日本が買ったと信じる者は「信念派」、負けたという真実をつかんでいた者たちは「認識派」と呼ばれたが、「勝ち組」からは「敗希派」と呼ばれ、ついには勝ち組によるテロ殺人も起こり、長く続いた。今の日本で誤用されている「勝ち組」「負け組」はこれが本来の用法で ある。 『灼熱』は、この「勝ち負け抗争」の小説化で、沖縄で生まれた移民として「勝ち組」の若い者となる比嘉勇と、ブラジルで生まれサンパウロに住んで都会的な知識を持ち、勇の親友だったのが「負け組」になるトキオを中心に物語が描かれていく。 この戦争で日本は、米英オランダに宣戦布告しているが、最後になってソ連が参戦、中国もポツダム宣言に参加することで対