スヴェトラーナ・ゴルブの電話は2月24日以来、鳴り止まない。ロシア中からかかってくる電話の向こう側にいるのは、ロシアの血なまぐさい戦争でウクライナに派兵されている息子や兄弟や夫の安否を知ろうと必死の家族たち。その声から涙ぐんでいることがわかる。 ゴルブは熱くなったスマートフォンを指して言う。 「もうたいへん。ものすごい数の電話があります。まさに涙の海です」 ゴルブは「兵士の母親委員会」の代表を務めている。ロシア兵士の権利擁護を訴えてきたNGOだが、いまや兵士の安否を心配する親族にとって頼みの窓口になっている。 「ほら、言ったでしょ」とゴルブは肩をすくめ、話の途中でかかってきた電話に出た。事務局はモスクワ北東部の住宅街にある。 「これがずっと続いています。大忙しです。ひっきりなしに来客があり、要望を受けます。家族の利害を法廷で代弁し、懸念を当局に持っていきます」 兵士の家族は何も知らされてい