7月4日(木)は、2019年最大の話題作、劉慈欣『三体』の刊行日です!(『三体』とは? というかたは、ぜひこちらの記事をご覧ください)そこで、なんと『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』に収録した、『三体』から抜粋した章の改作でもある、劉慈欣の傑作短篇「円」を、ここで全文掲載いたします! いちど読めば、劉慈欣の閃きとスケールの壮大さがすぐにわかるはず! 円 The Circle 中原尚哉訳 秦の首都咸陽(かんよう)、紀元前二二七年(*注1) 荊軻(けいか)は、絹布の巻き物の地図を低く長い卓子の上でゆっくりと広げた。 卓子のむかいにいる秦の政(せい)王は、敵国の山河があきらかになるのを見て、満足げにため息をついた。荊軻は燕王の降伏のしるしを献上するために来ていた。地図に描かれた田野、道路、市街、城砦を見るぶんには落ち着いていた。しかし広大な領土を実際に見たときは、無力感を覚えずにいられ