『老子』、現代語訳・原文・読み下し 以下では『老子』全八一章を第一部「「運・鈍・根」で生きていくこと」、第二部「星空と神話と「士」の実践哲学」、第三部「王と平和と世直しと」の三部に分けて並べ直してある。各章を説明順に1講、2講などとならべてある。その章が本来の『老子』の第何章にあたるかは、見出しの最後の( )内を参照されたい。 第一部「運・鈍・根」で生きる 第一課 じょうぶな頭とかしこい体になるために もっともよく知られている老子の思想は、「無為(むい)」や「知足(ちそく)」という言葉だろう。欧米の人々には、この言葉自体を理解することが難しいらしいが、日本人は「無為」を「作為のないこと」、「知足」を「足るを知ること」と読み下すことができるから最初はわかりやすい。しかし、逆にそのために、『老子』の思想というと、消極・静観・節欲とされることが多く、極端な場合は「小狡(こずる)い」思想と誤解され