読書は自殺の時間稼ぎになる。そう信じている人はいないだろうか。 自死を考えている人に本を渡し、「本を読んでいるあいだは、死のことを考えずにすむ」というコメントを目にしたことがある。 あるいは、「死にたくなったら読む本」と紹介される本がある。NHK「理想本箱」では、「大丈夫だ」と励ましたり、「自分の価値は自分で作ることができる」と支えてくれる本が紹介されている。 だが、本当に辛いときは、本を読んでられない。その苦しみや悲しさを、やり過ごすのに精いっぱいで、目は頁を滑り、文字を追うことすらままならない(経験あるだろう?)。 ただし、「この本がある」と思うことで支えになる、そんなお守りのような本は、確かにある。辛いとき、読まなくてもいい。触っているだけでも、その場所に目をやるだけでもいい。 例えば、クシュナー『なぜ私だけが苦しむのか』という本を推す。 心に痛みを抱きながら、日々をなんとかしのいで
