今回の福島原発事故によって、原発周辺地域は高濃度の放射能汚染に見舞われ、もはや長期にわたって生活圏として機能しえないとされている。周辺で栽培された野菜などの農産物に関しても出荷停止措置が取られ、農家は苦境に陥っている。そんな中、3月24日には福島県須賀川市の農家の男性が自殺するという痛ましい事件も起きた。これは遺族が言うように、「原発に殺された」のである。原発は地域に住む人々が代々積み上げてきたものを一瞬にして破壊したのであった。 このように、原発という存在は生活領域としての「地域」と根本的に対立する。それにもかかわらず、1966年に日本発の原発(日本原電東海1号機)が稼動して以来、2010年末時点で54基もの原発が日本全国に建設されてきたのである(世界第三位)。なぜこれほど多くの原発が建設されることになったのか、そしてそれによって人々の生活はどのように変容していったのか、「地域」の視点か