『砂の文明・石の文明・泥の文明』 松本健一 松本健一さんの著作の中でも、超一級に面白い文明論。 非常に大雑把に言えば、ヨーロッパ的「石の文明」、中東・中央アジア的「砂の文明」、東アジア的「泥の文明」という枠組みを立てた上で、各文明がいかなる性質を持ち、「文明の衝突」なるハンチントン的言説がいかに欺瞞的かを論じ、かつ「泥の文明」における日本を考察する、という内容です。 こうした枠組みが模式的であり、十把一絡げ的であるのはもちろんですが、捨象があってこそ思考は進められる以上、仮構であれ「叩き台」を提出することは極めて重要です。加えて、松本氏の議論は平明かつ説得力があります。 石の文明とは、「外に進出する力」です。 これは、表土の乏しい土地における牧畜という生活様式に由来します。牧畜は広大な牧草地を必要とし、生産力を上げようとすれば「外に出て行く」しかありません。 また、貧しい土で農作物を得よう