アニメ『獣装機攻ダンクーガ ノヴァ』の設定、「戦場、紛争で一方が負けそうになると現れて、戦局をイーブンに戻して去っていく」というのがあまりにはた迷惑でびっくりしたので、ついこんなものを書いてしまった。反省はしていない。 アラビア半島の太陽は熱かった。 ユーリー・オルロフはテントの床にぐったりと腹ばいになったまま、双眼鏡を覗き込んでいた。砂漠用テントの厚い布地も、空気そのものの孕む熱を締め出すことはできない。噴き出す汗がすぐに蒸発し、肌に白く塩を残していく。 眼下の街では散発的な小競り合いが続いている。AKの銃声とRPGの発射音が、時折思い出したように沸き起こり、また途絶える。 イラク北部、キルクークの南西およそ40kmに位置する小さな街。あたり一面砂漠に囲まれたこの街はいま、国家の主権を争う二つの武装勢力が衝突する最前線となっていた。 ユーリーがこんな片田舎に来たのも、その衝突目当てである