著者・レベッカ・ソルニットが描き出すのは、災害後に形成される人びとの友愛や協調である。サンフランシスコ大地震(1906)、ハリファックスの爆発事故(1917)、ロンドン大空襲(1940)、メキシコ大地震(1985)、アメリカ同時多発テロ(2001)、ハリケーンカトリーナ(2005)。これらの歴史的災害において、人びとは秩序だった避難を行い、すぐさま救援活動に身を呈し、物資を配給した。一方、政府や軍隊などの官僚組織は機能不全に陥り、また人びとの暴徒化を恐れ、被災者に対して武装するまでにいたった。無実の被災者が略奪者として撃ち殺され、隔離され、十分な救助を与えられないままであった。災害以上に人的な二次災害を引き起こすのは彼らである。ソルニットはそれを「エリートパニック」と呼び、その原因は被災者に対する間違ったイメージにあるという。ハリウッド映画などの災害スペクタクルに描かれるような、混乱した群