これ面白かった! わたしの興味の真ん中を貫くのみならず、「人間とは何か」を考える上で、新しい導線を示してくれるスゴ本。 一言なら「人形の哲学」。人形に寄り添って、それを愛でる人間にも触れつつ、人間との関係性の上で「人形とは何か」を理論化しようとする。冒頭で著者自身も告白する通り、人形ワールドはあまりに広く深く多様であり、単一の本質に収斂することはない。これは、読み手の「人形体験」に応じて首肯いただけるだろう。 わたしの場合、最も強烈だったのが、松丸本舗で球体関節人形に会ったとき(清水真理の人形だった)。書棚の一角の透明なケースに収められた”彼女”を見たとき、沸いてきたものを言葉にするのは難しい。美しさ、愛らしさ、醜悪さといった言葉をどんなに尽くしても、言語だけでは捉えきれない。『人形論』の著者・金森修は、その言葉で介入できない「何か」を承知の上で語ろうとする。 まず、人形の歴史を振り返り、