現代の“ノマド”の誇りクロエ・ジャオ監督による映画『ノマドランド』は、家がなく、車で寝泊まりしながらアメリカ合衆国各地で日雇い労働をしつつ旅する人々を描いた作品である。ヒロインであるファーン(フランシス・マクドーマンド)はネバダ州にあるその名も「エンパイア」(「帝国」を意味する)という名の町で暮らしていたが、ここは2008年のリーマンショックの影響で企業倒産や工場閉鎖が続いた結果、ゴーストタウンと化した。ファーンも家を失って、RV車で移動するノマド生活を送るようになった。ファーンは各地で労働しながら、旅先で放浪の仲間たちと出会う。 ジェシカ・ブルーダーによる原作『ノマド 漂流する高齢労働者たち』(鈴木素子訳、春秋社、2018年)は実際に放浪して暮らす労働者たちを取材したノンフィクションである。原作に登場しているリンダ・メイ、スワンキー、ボブ・ウェルズは本人に近い役柄で映画にも出演している。
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