手塚治虫は、自作が刊行されるたびに追加執筆と再編集をくりかえしていました。そのため発表当時とはまったく違った形でしか読めなくなった作品も多くあります。 その最たる作品が『ジャングル大帝』です。現在流通している講談社全集版は、原稿の一部紛失のためトレスしたり、幼年向けに描きなおしたりしたものを含めて、エピソードの順番などを変えて再編集したもの。このためコマごとに新しい絵と古い絵が交互に登場するという、そうとうに珍妙な作品になってて、わたしなどはたいへん不満でした。 わたしがくりかえし読んだのは、1969年発行の小学館ゴールデンコミックス版です。総合的に幼年向けになってる講談社全集版より、こっちのほうがよほどましなんですよ。 そういう状況で『漫画少年版ジャングル大帝』(2009年小学館クリエイティブ、7600円+税、amazon)が刊行されたわけです。 講談社全集版とはまったくの別物です。これ